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自然を守り、 自然とともに生きていく

石鎚山系を源とする加茂川を上流に向かうこと約30分。
自然豊かなこの場所に、都会ではできない体験を提供する施設があります。
こちらを運営するのが、NPO法人西条自然学校理事長の山本貴仁(やまもとたかひと)さん。
施設は廃校になった小学校跡地を整備した「石鎚ふれあいの里」で、これまでに市民向け勉強会は通算178回、自然観察会や講演会は年間250本以上開催するなど、西条を拠点に自然にまつわる活動を精力的に行っています。
山本さんにこれまでの経緯と仕事にかける想いを伺いました。

 

#1 幼くして心に決めた将来の自分

山本さんは、西条市のお隣の今治市(旧玉川町)出身。山間ののどかな場所で育ちました。
物心ついたころから自然や動植物が好きだったという山本さんは、12歳にして野鳥の会に入会。松山市で観察会がある時には一人で電車に乗って片道1時間以上かけて通っていたそうです。
自分の興味に早くに気づいた山本さんは、小学6年で自身の進路を決定。
きっかけは、「自然科学教室」に参加した時に出会った学芸員さんへの憧れからでした。大好きな自然や生き物を深く調査研究し、その知識を伝える仕事。
将来は必ず学芸員になる。山本少年はそう心に誓いました。

 

#2 自然との共存、命との別れ

高校へ進学した山本さんはボート部に所属。
一度好きになるととことん取り組む性格だったため、どんどん競技にのめり込んだそうです。3年生ではインターハイや、ジュニア世界選手権予選にも出場するなど、選手として目覚ましい活躍をします。
もちろん学芸員になる夢は忘れていませんでしたが、競技に熱中するあまり、思うように勉強が手につかず、第一志望の大学に入ることができなかったそうです。
大学生になり、どうしても自然や生物に関する専門的な勉強をしたかった山本さんは、通信教育や隣の大学に出入りさせてもらいながら勉強を進めていきました。

今ある環境で常にベストを尽くすのが山本さんの生き方。

また、大学時代は「探検サークル」に所属。長期の休日には北アルプスをはじめ、海外の山々を登山、洞窟探検や川下りなど、常に自然と共にある生活を送っていました。

そんなある日、決して忘れることのできない事件が起こります。

別のグループで登山していた山本さんの親友が雪山登山中に遭難し、亡くなってしまいました。

大きなショックを受けた山本さんでしたが、不思議と「もう登山なんてこりごりだ」とは思わず、「ちゃんと登山しよう」と考えていました。
「これが自然と向き合うということだと思いました。自然の力の前では人間なんて無力なものです。僕たちにできる事は、起きてしまった事故の原因を研究し、少しでも事故のリスクを下げること。せっかく好きなことをやってるんですから。それが親友のために僕ができる唯一のことだと思いました。」

自然と共に生きるということは、そこにある脅威とも常に向き合うということ。親友だけではなく、それから後も山本さんはたくさんの命との別れを経験することになります。

「ようやく悲しみが癒えたと思ったらまた事故が起きて…。それの繰り返しです。」

寂しそうに語る山本さんの表情の奥にあるゆるぎない覚悟。

「それでも、なお―。」そう言っている気がしました。

 

#3 博物館学芸員としての歩み

大学を卒業した山本さんは、愛媛県庁に入庁。自然研究課に所属し、愛媛県総合科学博物館の開館準備やプラネタリウムの運営、博物館オープン後は念願の博物館学芸員として観察教室の事務を担当します。
この頃に結婚。公私ともに充実した毎日を送っているはずでしたが、どうしても心から拭い去れないひとつの後悔がありました。
それは、第一志望の大学で生物学をしっかり学べなかったこと。

やり残しはしたくない

山本さんは博物館職員の仕事を続けながら大学院に入ることを決意。
博物館が休館日の月曜日に授業を集中させ、週に1回朝から晩まで講義を受け、翌週までにレポートを作成する日々。
当時は二人目のお子さんを授かったばかりだったので、夜はお子さんを抱っこしながら必死に勉強を続けました。
山本さん曰く、「これまでの人生で一番勉強した時期」でしたが、なんとか乗り越えられました。

 

#4 「西条自然学校」設立

山本さんが西条市に住むようになったのは、隣の市の博物館勤務になってから。
西日本一の標高を誇る石鎚山、魚が泳ぐ美しい水路がまちを流れ、日本有数の広さを持つ加茂川の干潟など、単一のまちで自然のあらゆる要素、生態系が凝縮されているところに凄みを感じたそうです。
「例えば、ヒマラヤに行って写真を撮っても、海は写りませんよね。でも西条市の港で写真を撮れば、海・まち・石鎚山がひとつのフレームの中に入ります。外国も含め、たくさんの自然環境を見てきましたが、ここは特に凄いと感じました。」

しかし、まちに住む人にとっては、この恵まれた自然環境は当たり前の日常の一部。つい見逃してしまい、その凄さにはなかなか気づかないもの。
西条の人に西条の自然の良さをもっと知ってもらおう―。そんな思いから、山本さんは月に一回、文化会館の一室を借りて「夜の自然学校」を始めました。
「『昔はホタルとか、生き物がたくさんいたけど、今はすっかりいなくなった』とか、言う人がいるじゃないですか。でも、ずっと思っていました。だったら、なぜ対処しなかったのかと。ちゃんと調べれば、人間と生き物が共存していく方法はあるんです。例えば整備する水路の角に石を少し置いておく。水の流れが少し穏やかになるだけで、メダカなんかは生きていけるんです。」

自然を科学的に調べ、伝えることで、たくさんの理解者や自然を守るプロを育てる。
そんな山本さんの活動が始まって10年が過ぎようとしていたころ、新たな転機が訪れます。

 

#5 博物館を退職、NPO法人設立へ

きっかけは、山奥にある大保木地区での観察会の企画から。
当時、「夜の自然学校」では昼間の昆虫採集などの実習ができなかったので、大保木地区の団体が運営していたキャンプ場に実習の受け入れをお願いしていました。
当時からこの地区は高齢化が進んでいて、熱心に活動している山本さんを見た方から「是非、この地区を良くするために施設の運営を手伝ってほしい」と頼まれたそうです。
ずっと目標としていた学芸員という仕事に就き、忙しい中修士課程を修め、ようやく本格的にやりたかったことをやりはじめた頃。迷った山本さんは、「自然を守りたい・調べたい・伝えたい」という自身の行動原理をもう一度振り返り、博物館の学芸員として出来ること出来ないこと、独立した団体として出来ること出来ないことを表に書き出しました。その結果、博物館を辞め、独立したほうが出来ることが多かったそうです。
安定した仕事を手放し、運営や経営のノウハウをゼロから学ぶのは大変でしたが、「自然の大切さをより多くの人に伝えたい」という思いから、大保木地区の団体の一員として加わり、独立することを決意しました。

やがて西条自然学校は、任意団体からNPO法人として旗揚げ、2015年には「石鎚ふれあいの里」の管理運営を受託し、現在の自然観察や体験教室の拠点としてスタートします。

 

 

#6 山本さんが伝えたいこと

「僕は子どもの頃に自然とともに生きていくと決めました。自分の一生を何に使うか、僕は自然を守るために使います。職業とはその手段のひとつにすぎないと思います。自分がずっと生きているという保証もない。自分はこのために一生を過ごしていきます。」
これまでたくさんの命との別れを経験してきたことで、今の一瞬一瞬を大切にし、常に一生懸命に悔いなく生きる。山本さんのこれまでの生き方は「一日一生(いちにちいっしょう)」という言葉がぴったりだと感じられました。

独立前は年間10回くらいだった観察会や講演などは、今では年間約250回に。観察会に参加した子どもたちが成長し、山本さんを訪ねてくれることもあるとか。そして山本さんに共感した人が集まって仲間が出来ることが何より嬉しいとのこと。
山本さんのこれまでの活動は、確かな成果として現れてきています。

最後に、この西条市というまちへの思いを聞いてみました。

「加茂川に潜った時、すごいなと感じたことを今でも覚えています。この先、西条から離れることはないと思います。豊かな自然がコンパクトに凝縮されていて、研究対象としても最高なんです。そこに人が住んでいて、自然の恩恵を受けながら暮らしています。その人と自然の共存関係が持続できるよう、これからも頑張っていきます。」

自分の好きなことを貫き通す道を選んだ山本さん。
その選択が与えてくれたのは、より多くの子どもたちの笑顔、そして仲間とのつながりでした。

西条自然学校が案内を務める「石鎚スターナイトツアー」の様子

 

#7 NPO法人西条自然学校

愛媛県には干潟から亜高山まで、多種多様な自然環境が存在します。
私たちはこの自然を調べ、その成果を伝えることで地域の自然を保全したいと考えています。自然環境の保全には科学的な視点が大切です。
継続して自然を学ぶ場を創り、地域の自然を正しく伝え、共存を考える人が増えることが私たちの願いです。(NPO法人西条自然学校WEBサイトより)

NPO法人西条自然学校WEBサイトURL
http://saijo-shizen.org/

西条自然学校フェイスブック
https://www.facebook.com/saijo.shizen/

私が書きました

Co-あきない宣言 編集部

Co-あきない宣言 編集部

Co-あきない宣言の編集担当です。 西条市では、市内で働き、輝いている市民をストーリー化して発信することで、西条市をPRしております!まだまだ不慣れですが、頑張ってシリーズを重ねてまいりますので、是非ご覧ください。

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