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愛知県から愛媛県へ愛(I)ターン。 有名店を手放して、西条で目指す理想の働き方。

2019年6月、愛媛県西条市に新しくオープンした「Cafeかさね」。一度見ると忘れられない、かわいらしい木造の三角屋根が看板代わり。季節の旬なフルーツを器からこぼれそうなほどたっぷり使ったパフェや、地元の新鮮食材を使った健康志向のランチが人気のカフェです。これらカフェで提供するメニューは、西条市での人間関係によって完成されたとも言えるほど、人とのつながりに恵まれているそう。
「愛知県から(愛媛県に)愛(I)ターン」と謳う店主の徳永忠士(とくながただし)さんと奥さんの優子(ゆうこ)さん。なぜ、西条市を選んだのか。西条市への想いとこれからの働き方についてお話しを伺いました。

 

#1 限界寸前。繁盛しても満たされない理由。

「忙しくて忙しくて。身体的にも精神的にも疲れ切っていました」
忠士さんは当時をこのように振り返ります。

愛知県犬山市の観光名所、国宝犬山城の城下町で、フルーツパーラーを営んでいた忠士さん。
今や、犬山城周辺は、SNSにより “インスタ映え”する古き良き城下町などが人気となった一大観光地です。2003年ごろに19万人まで低迷した犬山城の入場客数でしたが、2008年ごろから徐々に増加。入場客数は10年以上連続して増加しており、2018年度には61万人を超えています。忠士さんがお店を始めたのは、そんな、犬山城周辺が右肩上がりで再び盛り上がり始めた2010年ごろでした。

「タイミングが良かったんです。まだこのころの城下町はお団子屋さんやお饅頭屋さんといった昔ながらのお店がメインだったので、この場所でパフェを食べられるのは珍しかった。だからメディアにもたくさん取り上げてもらえたんだと思います」

犬山市にお店を出す前は、青果市場で競りを担当していた忠士さん。この経験を活かし仕入れた、旬の新鮮なフルーツを山盛り使ったパフェで話題を呼び、お店は大繁盛。観光客が犬山城に来たら必ず立ち寄るほどの有名店に成長しました。時に行列は3時間待ち。地元の観光協会からも、忠士さんのお店が犬山城周辺の発展に一役を担ったと言われるほどでした。

(忠士さん提供:犬山市のフルーツパーラーの様子)

一方で、有名店になればなるほど休息時間は急激に減っていきました。お店のインテリアや装飾から始まり、季節ごとのメニューの考案、仕入れ、仕込みや盛り付け、接客、さらには行列の整理や店舗周辺の掃除まで、お店のすべての仕事を夫婦たった二人だけでこなしていました。

「手を抜けない性格なんです。もっとお客さんに喜んでもらうためにはどうすればいいかって考え始めると、思いついたことをとことんやり込まないと気が済まなくなるんです」

気づけば、注文を受けたものをお客さんにただ提供するだけで精いっぱいに。

「流れ作業になってしまっていました。パフェの味には満足してくれていたと思いますが、『店員さんに愛想がない』なんて言われたこともあって。辛かったです。身体も心もパンクしそうでした

お客さんの顔が見え、ゆっくりと会話ができるお店にしたかったのに、その理想から離れていく現実。お客さんに認めてもらわないといけない焦りもあり、プレッシャーは増すばかりでした。

 

#2 西条との巡り合わせ。

限界寸前の忠士さんが、自分のしたいことをマイペースにできる新たな生活を求めてたどり着いたのが、西条市でした。
実は忠士さん、愛知県名古屋市で生まれ育ちましたが、両親や祖父母の故郷が西条市のため、小さいころから夏休みのたびに西条市へ帰省していたのです。

「僕にとって西条は『行くところ』じゃない。『帰るところ』なんです」

西条市民が特別な思いを寄せ、大切に伝統を受け継いでいる秋祭り「西条まつり」にも、毎年のように参加していた忠士さん。生まれ育ったのは名古屋市でしたが、西条市にはなぜか実家のような温かさを感じていました。

(忠士さん提供:「西条まつり」でいとこ達と撮影)

帰るたび、地域の人たちによそ者扱いされることなく温かく迎えてもらっていた忠士さん。
もともと西条市には親戚も多く、いつかは西条市に帰るかもしれないとぼんやり考えていましたが、現状の生活に疲れを感じていたこともあり、西条市への想いが徐々に強くなりました。
「西条に帰るなら、自分も親戚も体が動くうちがいい」。50歳になる忠士さんは、「これが最後のチャンスかもしれない」。そう感じ、名古屋市に暮らす父に「西条に帰ろうか」と相談しました。すると安心したかのように「西条の墓は任せた」と一言。決心がつきました。

「西条では、犬山のお店では叶わなかった、お客さんとのコミュニケーションを大切にゆったりと時間が流れる温かいお店を開きたい」。そんな思いで土地を探していたころ、たまたま売りに出ていた母方の叔父宅の向かいの土地を発見。

「巡り合わせがいいと感じました。ただ、大通りからは一本入った場所だったので、妻に相談すると、商売をやっていける場所なのかと不安そうで。でも、目の前に叔父宅があるから困ったら助けてもらえそうだし、『西条まつり』もしやすそうで(笑)。『やっぱりここで頑張ってみたいと思う』と伝えたところ、妻もそれならと応援してくれることになりました」
と笑います。

店の立地を気にしていた優子さんですが、西条市に移住すること自体には賛成。移住が決まりました。でも、犬山市に持つお店と土地はどうしたものか。
そんな中、ツイッターで大好きな「西条まつり」を検索していると、ふとある人の投稿が目に留まりました。そこにはたくさんの「西条まつり」の写真が。この人は何をしている人だろう。気になって投稿を読み進めてみると、名古屋市で「あいじょう不動産」という不動産屋を営む西条市出身の高木さんという方だと判明。
「西条の人なら悪い人はきっといない」。そんな根拠のない自信が湧き、すぐさま不動産屋に連絡。お店と土地の売買を任せることになりました。

「この不動産屋さんは、本当によく考えてくれて。せっかく人気のお店なんだからと、ただ家として売るんじゃなくて、僕が培ってきた仕事も一緒に『不動産価値+のれん代』という形での売買を提案してくれたんです。不思議と西条が縁をつないでくれた。ありがたい限りです」

 

#3 人が人を呼ぶ、西条人とのつながり。

2019年5月、いよいよ西条市に移住。6月のカフェオープンに向けて、準備を進めていました。この間も、次から次へと人が人を紹介してくれます。
西条市で提灯屋を営む店主の奥さんが愛知県出身ということがご縁となり、建築士さんやお店で使う予定のブルーベリーを栽培する農家さん、洋食屋さんを紹介してくれました。
さらに、そのブルーベリー農家さんがいちご農園さんを紹介してくれたり、洋食屋さんが卵屋さんを紹介してくれたり。たくさんのつながりが生まれました。

(忠士さん提供:優子さんとブルーベリー農園さんとのツーショット)

「こんなことは今まで経験したことがありませんでした。同業者同士、普通は競争するもので、仲が良いなんてありえないこと、ましてや同業者を頼るなんて。西条に来てこんなにも親切にしてくれることにびっくりしたんです」
こうして地域の人に助けられ、フルーツや野菜は地元産のものを積極的に取り入れられるようになりました。このような西条人のつながりがなければ、完成していなかったかもしれません。

(地元の食材を使ったパフェ)

忠士さんにとって西条市の印象とは。

「小さいお子さんもお年寄りも、初めて道端で会う人でも、にっこりと挨拶をしてくれる素敵なまちです。急な雨が降ったときは『洗濯物濡れるけん、取り込んどいたよ』って言ってくれたりして、距離が近いなって(笑)。ちょっとおせっかいなところもあるけど、都会にはない人の温かさを日々感じています」

「人口減少で地域が立ち行かなくなったから、新しく来た人を受け入れているという消極的な感じではなくて、もともと西条人には人を受け入れる気質があって、昔からずっと良いつながりが保たれている気がする」と語る忠士さん。西条市への移住者が1年間で3倍にも増加したのは、忠士さんの言う西条人の温かく親切な人柄が理由の一つなのかもしれません。

 

#4 西条での「Co」「小」「呼」あきない。

「Cafeかさね」のインスタグラムには、美味しそうな果物パフェやキッシュランチなどの写真がたくさん。でも、それと同じくらい、お店を訪れたお客さんの、たくさんのキラキラ笑顔が記録されています。

「西条のお店は、お客さんとのコミュニケーションを大切にできるお店にしたい。僕にとってそれは、お金なんかよりも大事なことなんです」

これまでがむしゃらに働いてきた忠士さん。今までどおりの収入が得られなくなることに少なからず不安があり、移住前に優子さんに相談したこともあるそうです。「食べるのに困らなければ、少しお釣りがくるくらいでいいんじゃない?」そう言って西条市への移住を悠然と受け入れてくれた妻の存在にも支えられています。

「小商い」は、地方で暮らす新しいライフスタイルの一つとして定着しつつありますが、西条市の「Co-あきない」には、様々な意味が含まれています。人と人とをつなぎ、コミュニケーションを大切にする「Co」、小さくても自分のやりたいことを自分らしいやり方で実現しようとする「小」、そんな自分らしく生き生きと働く人がさらに人を呼び、集まり、コミュニティが広がる「呼」。

収入やお店の規模が小さくても、人が人を呼び、時にゆるやかに、時に力強くつながっていく。それでいてゆっくりマイペースにあきないを継続できる。忠士さんは、ここでそんな理想の働き方がごく自然にできつつあるようです。

「僕も妻も、西条をとっても気に入っています。西条に来てから夫婦喧嘩は一回もしていないんですよ(笑)。妻は飛騨高山の出身ですが、西条の山々の景色が故郷に似ていて落ち着くそうで。市内どこを流れる水を見てもきれいで、それだけでも気持ちがいい。西条出身の人には当たり前でも、外から見たら当たり前なんかじゃない。よく夫婦で市内を散歩するので、これからももっと西条のいいところを発見していきたいと思います」

 

#5 Cafeかさね

「Cafeかさね」のお店の名前の由来は、松尾芭蕉と「奥の細道」の大半を共にした弟子、河合曾良の句「かさねとは 八重撫子の 名なるべし」。「道すがら出会った『かさね(重)』という少女の名前が実に上品で可愛らしく、この名前はきっと八重咲き※の撫子(なでしこ)にちなんで名付けられたのだろう」という意味の句です。
オープンから約半年。早くも名前のとおり、市内外からやってくるお客さんに愛される「Cafeかさね」。地域の伝統がご縁となり、西条人とのつながりが次々と重なり、ご夫婦のほっこりとした笑顔やお店を訪れたお客さんの笑顔も重なって、これからさらに色鮮やかな花をたくさん咲かせることでしょう。

※八重咲き:たくさんの花びらが重なって咲く花の咲き方

住所:〒793-0023愛媛県西条市明屋敷481-6
TEL:0897-47-6122
営業時間:8:30〜17:00 (定休日:木、金曜日)
Instagram:https://www.instagram.com/cafekasane/
Twitter:https://twitter.com/cafekasane

この記事を書いた人
Co-あきない宣言 編集部

Co-あきない宣言 編集部

Co-あきない宣言の編集担当です。 西条市では、市内で働き、輝いている市民をストーリー化して発信することで、西条市をPRしております!まだまだ不慣れですが、頑張ってシリーズを重ねてまいりますので、是非ご覧ください。

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